連作 玉砕パフェ
ぎょくさい         
〜玉砕パフェ 2〜

【1994年10月30日】
 2)
準備万端整えた(と思っていただけの)私たちは喫茶店に戻り、テー
ブルにつきました。
まずルールの説明。30分のあいだ席を離れてはいけない、途中で吐
いたらアウト、等。そしてパフェがテーブルに置かれました。

目の前に座っていた友人の姿が消えました。
正確にはパフェに視界を塞がれたのです。

パフェの高さは優に50センチは超えていました。逆三角形のグラス
はコーンフレークがぎっちり詰め込まれ、その上にアイスクリームが
少なく見積もっても20玉以上積まれていました。
そしてボール一杯分はありそうな生クリーム、ホットケーキが三枚、
ポッキーが数本、とどめにドスのごとく突き立てられたバナナ。
その凶悪なスペックは食べ物を超えもはや暴力の域に達していました。

私たちは笑いました。笑いつづけました。自分たちの愚かさを。
不思議と涙は出ませんでした。

笑っても目の前の糖類と脂肪の構造物は消えてくれません。
もはや2万円の夢は消え失せ、私たちは敗残の兵のごとくスプーンを
取りました。
うまいともまずいとも感じませんでした。ただ体内に流し込んでいく
のみでした。
せめてもの抵抗策としてアイスとコーンフレークを混ぜ合わせかき込
むという手も考えましたが、
コーンフレークまでの道のりがあまりにも遠く断念しました。

私たちの戦いは山をわずか10センチほど削った時点で終わりを迎え
ました。
夢の代償はパフェ代2,800円でした。

                        (つづく)

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